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カセットデッキのキャプスタン駆動用モーター(1)

Motorfail1 カセットデッキに使われているモーター、特にキャプスタン駆動用のブラシ付きDCモーターについてお話ししましょう。いわゆる高級と言われるカセットデッキでは大抵、ブラシレスのDDモーターがキャプスタン駆動に使われているケースが多いのですが、アイワやパイオニアでは年代にも寄りますが最近の最高機種でもブラシ付きのDCモーターでベルト駆動しています。両者一長一短あるようですが、ワウフラッターが変わらなければ特に使っていて差異を感じることはありません。しかし一番の違いは信頼性でしょうか。ブラシ付きモーターでは使うにつれブラシが摩耗します。特に私の経験ではパイオニアのデッキでは故障の頻度が高い気がします。というのはアイワのデッキ(XK-009/S9000)は私のかすかな (^^; 記憶に間違いなければ、テープを入れてプレイボタンを押さないとキャプスタン(モーター)が回りません。これに対してパイオニアのデッキは電源を入れている間、ずっと回り続けているからです。

Motorfail 例えば写真はパイオニアのデッキのキャプスタン駆動用モーターですが、完全に断線しており、分解してみると案の定ブラシが完全に摩滅していました。こうなるとメーカーに修理に出すか、自分でモーターを交換する必要があります。交換する場合、代わりにどんなモーターでもよい訳ではありません。キャプスタン駆動用モーターはワウフラッターはもちろん、テープの再生速度を決める非常に重要なモーターであるからです。

Motor9000 外したモーターの型名「SHL2L」からネットで検索してみると、12VDC駆動、2400rpm、CCWという仕様が分かりました。12Vはモーターの定格印可電圧で、2400rpmは毎分の回転数、CCWは正面から見て反時計回りに回転するということです。分解した写真にも写っていますが、キャプスタン駆動用のブラシ付きDCモーターには駆動制御用のIC回路が内蔵されており、印可電圧が多少変動しても回転数は2400rpmで一定になるようになっています。すなわちモーター端子電圧の12Vというのは、そのままモーターに印可されるわけではなく、制御IC用電圧であるわけです。ですからモーターに表示された極性を逆に使うことはできません。壊れてしまいます。また回転方向は常にCCWで逆回転はできません。

さて、ジャンクで入手したデッキですから、この壊れたモーターが純正である保証はありません。ちょっと計算してみましょう。モーターに付いていたプーリーの直径が0.85cm、外周は0.85cm×3.14=2.669cmになります。2400rpmを秒当たりに直すと40回転(40rps)ですので、1秒当たりプーリーは40回転して、その間に2.669cm×40=106.76cmの長さのベルトを送り出すことになります。一方キャプスタンの直径は0.26cm、キャプスタンが取り付けられたフライホイールの直径は5.86cmでした。ベルトはフライホイールの外周に沿って巻き付いていますから、1秒間、106.76cmのベルトが外周に沿って動く間に、フライホイールが回転する回数は、フライホイールの外周で割って、106.76cm÷(5.86cm×3.14)となります。さらにキャプスタンも同じだけ回転しますので、最終的にキャプスタンの外周に沿って動くテープの長さはキャプスタンの外周を掛けて、106.76cm÷(5.86cm×3.14)×(0.26cm×3.14)=4.74cmとなります。すなわちテープスピードは4.74cm/sとなります。コンパクトカセットテープの定格速度は4.75cm/sですから、ばっちり合いました。実際にはキャプスタンやフライホイールの外径の製造誤差が必ずあるので、モーター側も±2%程度回転速度が可変できるよう、分解写真のように制御回路に可変抵抗を付け、裏面からドライバーで微調できるようになっています。

Motor007_2 まず、同型であるSHL2Lを入手すべくネットで検索しましたが、残念ながら見つかりませんでした。2000年にSankyoが製造を終了したと言う記事が海外にありました。またSHL2Lはパイオニアだけでなく、ソニーやTEACでも使われていたと言うことなので、ソニーにメールで問い合わせましたが、在庫は既にないということでした。TEACは部品番号が分からず問い合わせていません。またパイオニアはデッキ内部の部品は外販しないので、同じく問い合わせていませんが、パイオニアには在庫はあるのでしょうか。

Newmotor1 さらに互換性のあるモーターを検索します。マブチモーターにありました。型名EG-530AD-2Bです。仕様はもちろん外径、ネジ穴位置などもほぼ互換です。右のリンク先に設けた米国のオーディオ機器商社、Mat Electronicsにありました。最近よく利用しているElectronixの方がマブチモーターの品揃えは断然多いのですが、12V用のEG-530AD-2Bは欠番になっています。ちょっと嫌な予感が、でもMatにあればラッキーと早々購入しました。写真の左側がそうです。ラベルに仕様がしっかり書かれています。でもマブチモーターじゃないようです、印刻がありません。ノーネーム。まあMatのカタログにもマブチモーターとは書かれていません。ちゃんと動けばいいです。ここまではよかったのですが・・・

次に壊れたモーターからプーリーを外します。先ほどの計算からも分かるようにプーリーの外径が変わるとテープ速度が大きく変化するので、2400rpm固定のモーターを使うのであれば、どうしてもオリジナルを外し換える必要があります。外す前に忘れず必ずプーリーとモーターハウジングとの距離(高さ)を測って記録しておきます。新しいモーターに差し替える際に必要な値になります。プーリーは大抵、ロックタイトなどの接着剤で強固に固められていますので、そうそう簡単には外れません。と言って力任せに引っ張って、プーリーにキズを付けてはいけません。特殊な溶剤も使いましたが、それでも簡単には外れません。そこでプーリーを加熱することにしました。ハンダゴテをプーリーにあてがいます。外見からプーリーは真鍮?、モーターのシャフトはSUS(ステンレス)のようですから、熱膨張係数はプーリーの方がかなり大きく、穴が広がるはずです。また接着剤も大抵200度ぐらいでは柔らかくなりますから、その間にプーリーを外します。マイナストライバーをプーリーの根本にあてがい、モーターのハウジングを支点にテコの原理で押し出しました。外してすぐのプーリーはかなり熱いですから注意が必要です。私はうまく外れたのが嬉しくて指でつまみ上げてしまいました。もちろん人差し指と親指の腹に、酷い火傷を負ったことは間違いありません。(笑) この外し方は、もちろんプーリーが金属製の場合のみOKで、樹脂製の場合には溶剤も加熱も、変形してしまうのでできません。

さて、次はプーリーの取り付けです。接着剤で固めますが、ネジを固定するときに用いるロックタイトネジ止めのような嫌気性あるいは金属イオンで硬化するような接着剤を用います。通常の大気中の水分と反応する一液の接着剤ではなかなかシャフトの中まで固まらないことがあります。私もロックタイトを持っていますが、金属表面が汚れていたせいか固まらなかったことがあり、2液混合型のエポキシ系接着剤を使っています。これなら密閉されたシャフトの中でも時間で必ず固まります。

1日おいて十分固まったら、モーターをデッキメカに取り付けます。結線して心も弾み電源オン、ちゃんとフライホイールも回り始めました。さあ、テープ速度を調整しましょう。その前にちょっと音を聞いてみようと、いつものカセットを。ヘッドフォンからはちゃんと音が。ちゃんとじゃない!何これ、気持ち悪いお化けの歌?超低音、回転が遅い。モーター裏面の抵抗で調整しなければ。あれ、回しても変化ない。3kHzのテストテープを入れてみると、案の定周波数カウンターは1.3kHzの表示。調整範囲外です、いや仕様が違います。これだとモーターの回転数は1200rpm以下です。プーリーを取り付ける際に壊れた?フライホイールとのベルトが張りすぎ?結局同時に買ったスペアの同型モーターを無負荷で動かしても、以前、何かの際に買った2400rpm、9VDCのマブチモーターと比べれば、回転数の違いは目で見て、音で聴いて歴然でした。まがい物のモーターに騙されました。がっかりです。すぐMatにクレームを入れましたが、「電圧がちがうんじゃないの、米国は110Vだから」などというふざけた返事が。「扇風機のモーターじゃないだぞ!」と怒りのメールを送ると、今度は先方からモーター代金を弁償しますと言う返事が来ました。モーター探しはふり出しに。

(2)に続く。

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コメント

プーリーの交換方法、参考になりました。
ハンダゴテは50Wぐらいのもので可能でしょうか。
以前、Lo-Dの異なる機種だが機構が同じようなのでモーター交換しようとしたら、プーリーの位置が合わないので取り付けに苦労したものがありました。これで解消できそうです。

投稿: | 2008年4月21日 (月) 12時24分

ハンダゴテは30Wもあれば十分です。
余り長時間コテを当てているとモーターのハウジングまで
熱くなって持てなくなってしまいます。
モーターのハウジングが少し暖かいかなあ程度で
プーリーは十分熱くなっており、外せると思います。
火傷にはお気をつけください。

所長

投稿: 所長 | 2008年4月21日 (月) 22時35分

所 長 様
 デッキのメンテナンスのヒントとなる記事を多数ご掲載下さり、改めて深く感謝申し上げます。
 さて、2週間程前からキャプスタンモーター交換の為、プラスチック(合成樹脂)製プーリーを外そうと考え思考錯誤して参りましたが、全く断固として動かず、作業自体を断念しそうになります。
 つきましては、誠に恐縮ではございますが、何か良い方法をご存じでしたらご教授賜りたく、よろしくお願い申し上げます。
 勿論、自己責任の上での作業になる事を十分認識しておりますので、ご安心下さい。

投稿: それでもやっぱり、PIONEER | 2016年8月27日 (土) 15時50分

それでもやっぱり様

機種が不明でお答えできませんが、難しければ作業を中断することも、闇雲に分解して壊してしまうよりは大人の選択肢だと思います。私も過去、あそこで分解を止めておけばよかったと思う修理が多々あります。

投稿: 所長 | 2016年8月27日 (土) 19時27分

所長 様
 「勇気ある撤退」ですね。
 ず~っと、気になっている所でもあり、また今まで作業を途中で断念した事もなく、なかなか諦め切れないでいます。
 プーリー外し…、もうしばらく粘ってみます。

投稿: それでもやっぱり、PIONEER | 2016年8月27日 (土) 20時28分

お忙しいところおそれいりますがご指導をおねがいいたします 修理中のパイオニア製ct-8のデッキですが早送りモーターのトルクが弱いため作動がうまくいきませんのとテープが回転シテすぐにストップしてしまいます モーターはどのようなサイズをしようすればいいのでしょうかそれと テープがストップするセンサーの修理方法をよろしくお願いいたします

投稿: よしだ | 2018年10月 8日 (月) 11時58分

よしださま

残念ながら70年台のデッキ(非ロジックコントロール)は弄ったことがなく分かりません。ただCT-8は、ネットに修理記事がたくさん出ているようなので、尋ねてみられれば良いと思います。

投稿: 所長 | 2018年10月 9日 (火) 20時50分

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